電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > エアコンの動作原理と仕組み
エアコンは、室内の空気温度の調整を行ったり、湿度の調整を行うための設備である。空調設備のひとつであり、室外機と室内機で熱交換をすることで、冷房時は室外機から熱気を排出し、暖房時は室外機から冷気を排出する。
空気を直接入れ替えるように、室外の空気を室内に導入しているわけではなく、室外機と室内機をつなぐ冷媒を液体、気体に変化させることで熱を移動させる「ヒートポンプ」の原理で動作する。住宅であれば、冷房暖房兼用型の空冷ヒートポンプパッケージによるエアーコンディショナーが多くを占めており、これは通称「エアコン」と呼ばれている。
エアコンに求められる機能は「温度を調整すること」「湿度を調整すること」「気流を発生させること」の3つである。室内にいる人の好みに合わせて、空気環境をエアコンによって変化させ、過ごしやすい環境を作り出すのがエアコンの役割である。住宅や業務施設といった建築物だけでなく、電車や自動車にも、エアコンが設けられている。
エアコンの基本的な運転サイクルは「圧縮機」「凝縮器」「蒸発器」「膨張弁」の4つにより、冷媒ガスの温度と圧力を変換するサイクルを構築することで、冷暖房が行われている。
一般的な住宅用ルームエアコンでは、室外機に圧縮機・凝縮器が、室内機に蒸発器が内蔵されている。この3種類の機器を組み合わせ、冷媒配管に充填されている冷媒をガスから液体に変換しつつ温度を変え、熱の放出と吸収によって冷暖房が行われる。
寒冷地など、過酷な外気の環境に設置されるエアコンは、圧縮機の運転を電気熱源で行うとパワー不足となることもあり、ガスを用いたヒートポンプや灯油の燃焼で動作するヒートポンプに、冷暖房のサイクルを構築する方法も普及している。
圧縮機の運転を行う熱源として「電気」「ガス」「灯油」のいずれか、という違いのみであり、基本的なサイクルの違いはない。
ガスや灯油を熱源として圧縮機を運転させる場合、電気熱源よりも部品類の劣化や損耗が大きいとされている。2万時間程度の運転で、オーバーホールを含む大規模メンテナンスが必要とされ、4万時間の運転で圧縮機本体の更新が必要となる。
電気式の圧縮機であれば、燃焼を伴う機関を搭載していないため、圧縮機の劣化速度は遅い。ガスヒートポンプエアコンや石油ヒートポンプエアコンよりも長期間の運転に耐えるとされ、長期に渡っての利用が可能である。
連続運転が求められる用途では、燃料によるコストメリットが高くても、更新に関わるコストが大きくなるおそれがある。慎重な比較検討が求められる。
空調機を使用して冷房を行うサイクルを説明する。圧縮機に電力を供給して、冷媒の圧力や温度を変化され、冷媒を循環させることで冷房効果を得るのがエアコンの原理であり、業務用の大型空調機から、家庭用ルームエアコンまで、基本的な熱サイクルは同じである。
エアコン室外機に内蔵されている「圧縮機」を運転し、低圧ガス冷媒を機械的に圧縮し、高温高圧ガスに変換する。最もエネルギーを大きく使用する工程である。
電気熱源であれば、圧縮機を駆動させるために電気エネルギーが用いられるが、ガス熱源や灯油熱源でも駆動可能である。電気熱源は「EHP」、ガス熱源は「GHP」、灯油熱源は「KHP」と呼ばれ、熱源によって区分されている。
ガスや灯油を用いた圧縮機は寒冷地でも高い暖房効率を発揮するのが特徴で、都市ガスやプロパンガスが普及している地域ではGHPが広く使われる。北海道など一部寒冷地では、灯油を熱源としたKHPも普及している。
高温高圧ガス冷媒を、室外機に内蔵されている「凝縮器」で放熱する。熱交換器を通過し熱を失った高温高圧ガスは、高圧の液体に変化する。熱交換器によって熱を奪い、奪われた熱は室外機で外部に放出する。この原理により、冷房運転している室外機からは熱風が放出される。
冷房運転時に室外機から熱い排風が発生するのは、室外機に搭載されている凝縮器によって熱が奪われ、その奪われた熱をファンによって放出するためである。熱エネルギーを持つ排風を自ら吸い込むと、熱交換に悪影響を及ぼす「ショートサーキット」の状態となり、効率の悪化を引き起こすため注意を要する。
高圧の液化冷媒は膨張弁に流れ込む。膨張弁は、液化した高圧冷媒の圧力を下げる機能があり、高圧の液化冷媒は圧力を失って低圧の液化冷媒に変化する。圧力が急激に変化し冷媒の沸点が低くなり、蒸発しやすい状態が作られる。
蒸発しやすい状態となっている低温の液化冷媒を、室内機に搭載されている蒸発器に通して気化し、低圧ガスに変換する。液体が気体に変換される瞬間、気化熱の効果により周囲から熱を奪う性質があるので、ここに冷気が発生する。
室内機側で発生した冷気を、ファンの運転によって放出するのが、室内機から冷風が出る原理である。
蒸発器を通過して低圧ガスとなった冷媒は圧縮機に戻り、再び熱源によって高温高圧のガスに圧縮される。このサイクルは空調を停止するまで繰り返される。
エアコンは室内温度の調整とともに、湿度を大きく変化させる性質がある。エアコンを冷房運転すると室内が除湿される。
室内機の内部には、熱交換を行うためのフィンが取り付けられている。エアコンを冷房運転すると、室内機に吸い込んだ湿気を含む空気が、冷やされたフィンの部分に結露として水滴に変化する。結露水はドレン配管を通して外部に排出され、室内の空気中に含まれる水分が室外に排出され、湿度が低下する。
長期間冷房運転し、十分に室内温度が低くなれば、空気中に含むことが出来る水分量が少なくなり、空気は乾燥していく。
エアコンには「除湿運転」というモードがある。冷房運転によって空気中の水分が排出され除湿されるが、多くのエアコンには「除湿」または「ドライ」という名称の機能が備わっており、冷房運転と区別されている。除湿モードと冷房運転の違いについて解説する。
「除湿(ドライ)運転」と「冷房運転」は、どちらも冷気を放出して湿度を下げるエアコンの機能であるが、その機能には明確な違いがある。
冷房運転は、部屋の温度を下げるということが目的である。冷房の結果、湿度が低下するため除湿と同じ効果を得られるが、そもそもの目的は「温度を下げる」ということであり、除湿のために利用する機能ではない。
室温が下がると、空気中に含める水分量が少なくなるため、室温を大きく低下させれば、湿度も同様に大きく低下する。
除湿運転は「室温をできるだけ変化させず、湿度だけを低下させる」のが目的である。湿度のみを調整することで、温度を低下させることなく快適な環境を作り出せる。
除湿を行うためのエアコンの機能として「除湿冷房方式」と「再熱除湿方式」があるので、ここで解説する。
除湿冷房方式は、冷房運転による除湿機能をそのまま利用した除湿方式で、できるだけ室温が変わらないよう弱冷房運転で除湿する機能である。エアコンの吹出口からは若干の冷気が放出されるため、風速の小さな冷房運転として捉えられる。
冷房運転よりも温度変化を小さく抑えつつ除湿する機能だが、室温の変化を伴うため、エアコンの付近では室温変化が発生する。
冷房運転では室温が大きく低下するので、風量を小さく抑えて弱冷房運転とすることで、室温変化を抑制しているが、エアコンから一定量の冷気を放出しつつ湿度を下げる手法のため、若干の温度変化は避けられない。
一般的な冷房運転よりも冷気の発生量が少ないため、消費電力は冷房運転よりも小さい。
再熱除湿方式は、室温を低下させないよう「冷房」と「加熱」を組み合わせることで、室温をまったく変化させず、湿度のみを調整する機能である。除湿冷房方式では、吹出口からの冷たい空気によって室温が低下するが、再熱除湿方式は冷房運転によって発生した冷気を、室温に近い温度まで加熱してから放出することで、室温の低下を防止する。
湿度が高くても室温を下げたくない、就寝時の湿度調整を行うといったシーンで活用される。除湿冷房方式では室温が下がってしまい快適性を損なうため、温度変化を伴わない、再熱除湿方式による除湿が推奨される。
再熱除湿方式は「冷房と加熱を同時に行う」ことで、室温の変化を防止するシステムであり、エネルギー損失が非常に大きい。除湿冷房よりも消費電力が大きくなるため、電気代が高くなる傾向にある。
電気代と消費電力の関係を、除湿機能の観点で比較すると「除湿冷房(弱運転) < 冷房 < 再熱除湿」となる。室温が高い昼間などは、冷房によって室温と湿度を大きく下げ、就寝時や雨季など、室温を下げたくない場合は再熱除湿を利用するなど、環境に応じた使い方をするのが良い。
エアコン室外機とエアコン室内機は、空気の入れ替えをしているわけではなく、冷媒ガスを通じた熱交換が行われている。室内外の空気の行き来はまったくない。
冷媒ガスを用いた熱の移動のみ行われているため、換気機能のないエアコンをどれだけ運転しても、室内と外部の空気の入れ替えは発生しない。窓を開けるか、換気ファンを運転して外気を取り入れなければならない。
外気の取り入れは、空調されていない外の空気を室内に取り込むことであり、冷房時は「熱い空気」、暖房時は「冷たい空気」を室内に取り込むことになるので、消費電力の増加につながる。最低限の換気に留めると省エネルギーにつながる。
エアコン室内機にはエアフィルタが内蔵されており、室内の空気をエアフィルタに通すことで、空気中のほこりが除去される。
家庭用ルームエアコンでは空気清浄機のような高性能なフィルターは搭載していないが、プレフィルターと呼ばれる簡易フィルターであっても空気中のほこりは除去されており、これは空気清浄機と同じ仕組みである。
室内の空気を取り入れて室内に戻しているのであって、換気されてはいない。空気清浄機をいくら運転しても、二酸化炭素やホルムアルデヒドなどの有害物質は除去されないため、換気が不可欠である。
多機能ルームエアコンのひとつに、換気用ホースを冷媒管に沿わせて屋外まで通し、外気を取り入れる機能がある。細いホース程度のものであり、導入できる換気量は10[m3/h]~20[m3/h]程度と最小限の換気量でしかないが、エアコンの付加価値として「換気機能」を搭載した製品である。
近年のマンションは断熱性能が高く、高気密かつ高断熱として造られるため、機械を用いた強制換気が欠かせない。通常、法規制により換気ファンを用いた「24時間換気システム」の設置が義務付けられており、エアコンによる換気を付加せずとも、建物としての換気設備が運転していれば、新たに換気設備を設ける必要はない。
エアコンが外壁に面していなければ、換気機能を活かすのが困難である。マンションでは外壁に面していない部屋も多く、換気ホースを外部に突き出すのが困難な間取りも多々ある。
エアコンで本格的な換気を行うことは考えず、専用の換気設備で外気との入れ替えを考えるのが合理的である。